003 =====
「凛も、やめればいいのに」
風紀委員長なんて大役が、彼に務まるなんて誰も思ってない。しかし、無駄に責任感のある彼はやめようとしない。
でも、それは俺も分かってるんだ。だって、口ではああ言いながらも見回りにくる凛を俺は待ってる。それに、やめられて困るのも俺だ。そのくらい、今の俺と凛の関係はもろいのだから。
「気付いてる?」
「…え?」
「俺は、毎回毎回凛が来るのを待ってるんだけど」
凛が忙しくなさそうな時を選んで、面倒くさくなくて可愛い相手を選んで、自分が傷つく方法を選んで。
他に、どうしたらいいか分からないから。俺にしか分からないやり方で、凛の記憶に残るように。そうやって今日までやってきた。でも、そろそろ限界なんだ。
凛は一瞬にして顔を真っ赤にしたが、すぐに手を伸ばして俺の頭を撫でた。
「日比谷くん」
「……」
「日比谷くん。そんなことしなくても大丈夫だよ? …呼ばれたら、ちゃんと答えるから」
だから、そんな悲しい顔しないで。
やっぱり好きだ、そう思った。
俺は、愛しくて愛しくてたまらない彼のことを、力一杯抱き締めた。
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家出日和