りんごの花 =====

 幼い時に死んでしまったお母さん。
 ほとんど覚えていない母の記憶は、写真でしか見たことのない姿は、確かに儚げだった。


「りんごの名前は、赤じゃなくて白なんだよ」
「どーゆうこと? りんごは赤だろ?」
「りんごの名前は実じゃなくて花が由来でね。その花が白なんだ。彼女は、その花が大好きだった…」


 母さんは「子どもが出来たらりんごとつけよう」と何度も言ったらしい。それは女の子の時に関してだけのハズが、やっぱり諦めきれないと結局りんごと名付けられたんだとか。
 おかげで今、名前でからかわれることもあるわけだが、この名前を嫌いになれないのは気に入ってるからだろう。

 未だにりんごの花は見たことがない。それなのに、知っている気がするのは妙な親近感のせいかもしれない。


「あ、ホットケーキ作ってくれたんだ? …そうだ、確か蜂蜜が…」
「蜂蜜? そんなの隠し持ってたのか」
「あった! ほら、りんごの花の蜂蜜」
「ちょ、俺を食べる気か」


 きっとこの蜜のように、甘い香りがするんだろう。

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