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俺はそのまま冷蔵庫に向かい、中身のチェックをした。家を飛び出した時のまま、ではなく少し使った形跡がある。鶫か鴇矢くんだろうか。少し材料を買い足さなくてはならない。
「買い物してくるので、佐月先輩はゆっくりしていって下さいね」
家に上がり込み、優雅にコーヒーを飲む先輩に一声。コーヒーは鷹人さんがいれたものだ。
「財布、持った?」
「今度はちゃんと帰ってくるんだよ?」
「あーもう茶化さないで下さい! 行ってきます!」
数日前に飛び出した時のことを言われて、恥ずかしくなる。特に鷹人さんや鴇矢くんにからかわれたというのが精神的にくる。残り3人にはよくされるからな。
近くのスーパーまでの道のりを使って頭の整理をする。
思ったよりもあっさり帰宅出来たのは、やっぱり佐月先輩のおかげだ。言い訳じみてはいるけど俺のせいではないと言ってくれて、連絡まで入れていてくれた。事の発端も彼ではあるけど、よく考えると彼はまだ動いていない。俺たちが勝手にバタバタしてしまっただけだ。
「ハヤシライスとかビーフストロガノフあたりなら、佐月先輩にも合いそうな気がする」
ゆっくりしていってと声もかけたし、誘えば夕飯も食べていってくれるだろう。家では奉仕が受けられないと心底残念そうだった彼のことを思い出しながら、俺はお礼を考えることにした。
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