033 =====
思いつく限りの名前を思い出してみるが、佐月という響きに心当たりがない。いや、思い出せないだけでどこかで聞いたような気もする……うんうん唸っていると、誰かが俺の肩に手を置いた。
「少し久しぶりだな、みんな元気そうで何よりだ」
「佐月も相変わらずみたいで安心したよ。連絡くれてありがとう」
すでに聞き慣れた、少し偉そうな言葉遣い。そう言えば、彼はここの人たちと幼なじみという関係性だった。
「そういえば、御堂先輩は佐月先輩でしたね」
「ん? 何を分かりきったことを。しかし、名前で呼ばれるというのも悪くないな。次からも是非そう呼んでくれたまえ」
「……先輩はそーゆう人ですよね」
渇いた笑いを浮かべながら、言葉の意味を考える。
さっき、鷹人さんは「佐月が教えてくれた」と言っていた。佐月、イコール御堂先輩は、俺を家に呼びながら鷹人さんに一報入れていたわけだ。つまり、俺がしていたのは保護者公認の家出だったということになる。
「うわ、恥ずかし……」
俺の独り言に鴇矢くんが首を傾げていたけど、気づかないふりをした。どうせ知られてるなら、もう少しゆっくりしてくればよかったかな。なんて、思ってもないことを思ったり。
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