032 =====

 久しぶりに感じる門をくぐり抜け、小さく息を吐く。なんだか緊張してしまう。ドキドキと心音が早まる。
 飛び出した手前、ただいまと入っていくのは気が引けて。俺はとりあえずチャイムを鳴らした。


「……りんご!」
「鴇矢くん」
「なんで、ピンポーンて鳴らしたの。普通に帰ってきて、よかったのに」
「だって、なんか……ね」
「おかえりなさい」
「……ただいま」


 暖かく迎え入れてくれる鴇矢くんに、早くも涙が滲む。
 おかしいな、たった1日ここを離れただけなのに。懐かしくてたまらない。


「りんごくん」
「た、鷹人さん……」


 鴇矢くんが出て行った雰囲気で感じ取ったのだろう。リビングに入る手前で鷹人さんが待っていた。名前を呼ばれ、少しびくついてしまう。悪いことをしたとは思ってないけど、申し訳なさは山ほどある。なんだか怒っているような気もする。
 近づいてきた鷹人さんに謝る言葉を探していると、暖かな温もりに包まれた。


「え、あの」
「まったく、心配したんだからね。急に飛び出したりなんかして、危ないだろう?」
「その、ごめんなさい……」
「連絡の1つも寄越さないし。佐月が教えてくれたからよかったものの」


 抱き締められながらのお小言に混乱する。お小言だけどとても暖かい。言い返せないので口を噤むが、心配されていたという実感に思わずにやけてしまいそうになった。いやいや、反省しなきゃ駄目だけど。

 ……って、佐月って誰だ?

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