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急に黙った俺に気付いたのだろう、御堂先輩は不思議そうだ。でも、それに構ってあげられるほど俺には余裕がなかった。
俺は、今回御堂先輩にバレたのは自分のせいだと思っていたのだ。もっと周りに気をつけていれば、そう何度も思った。何かへまをしたんじゃないか、そうやって自分を責めた。
でもそうではなかった。もちろん、100%悪くないとは言わない。言わないけど。
「俺のこと、いつから気付いてました?」
「そうだなあ、早い段階で気付いたと思うよ。でも、君たちはなんだかんだ忙しそうだったし……私自身も、春は転入生の方についていたからね」
つまり、春には気付いていたことになる。
そう分かったらイライラしてきた。
「俺は、何がいけなかったですか?」
「特には思いつかないけど……でも、強いて言うなら深鶴を理解していなかったこと、なんてどうかな。たった数週間で理解出来るようなものでもないと思うけど」
「つまり、俺に落ち度はない?」
「あるかないかと聞かれたらないね。私の目から見てだけど、君は十分にやっていたと思うよ。もちろん、深鶴は認めないだろうけどね」
そうやって笑った御堂先輩は少しだけ先輩っぽかった。
ただ好奇心で物事を追っているのかと思った。でも違った。御堂先輩は確かに少し変な人だけど、公平な目を持っている。自分の発言には自信と責任を持ち、常に思考することを止めない。
やっぱり頭のいい人だ。そして、今回については俺の味方になってくれるかもしれない人だ。
「御堂先輩。俺、春原家に戻りたいんです」
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