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「なんで、先輩は新聞部に入ったんですか?」
素朴な疑問だった。俺が散らかしてしまった道具を片づけながらふとぶつけてみる。単に、無言というのが辛かったというのもあるけれど。
御堂先輩は「ふむ」と一言呟き、説明する言葉を探しているようだった。
「まず単純に、好奇心だな」
「好奇心……噂に対してだと、単にミーハーな感じがしますけど」
「それも含めてだ。色々なことに興味を持てるというのは素晴らしいよ。そして、それを追求し皆と共有する。それが楽しいのだ」
実際に共有出来ているかは分からないが、先輩なりの理念があるみたいだ。
「じゃあ、単純でない方の理由は?」
「春原2、つまりは深鶴のことだが。彼とは色々と縁があってね、家でも学校でもよく比べられるのだ」
「だから、弱みを握ろうとしている、とか?」
「していることは同じかもしれないね……私は、彼のことはなんでも知りたいのさ。深鶴が私をどう思っているのかは知らないが、私は彼をライバルだと思ってあるからね。君のことも、好奇心の一言で片付けられる問題ではないということだ」
いつもよく話す人だなと思っていたけど、深鶴先輩のことになると余計に雄弁な気がする。ただし、俺の中では別の感情が渦巻いていた。
「もう1つ、教えて下さい」
「なんだい」
「俺と春原さんたちのこと、どうして気づいたんですか?」
「それは私だから、としか言いようがないな」
「具体的にお願いします」
「つまり、春原家の近くに住んでいれば気づくことなんだよ。うちの学園は全寮制でない。君が春原家の門をくぐるところを1度でも目撃すれば、誰だって興味を持つだろう? 私は深鶴のことを見ているからなおさら、ね」
要するに、今回のことがバレたのは深鶴先輩のせいってことだ。
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