022 =====

 潮時。それはつまり、どういう意味だろう。

 すぐに思い付くのは、俺が春原家の家政夫をしているいる事実を隠し続けることだ。
 自宅組が少ないためこれまで不思議なくらいバレずにきたけど、御堂先輩にバレてしまった今、潔く話してしまうのも手かもしれない。

 でも、もう1つ可能性がある。


「潮時ってどーゆう意味だよ」


 話を聞いていた鶲が口を挟む。俺も気になっていたけど、聞きづらいその指摘。
 俺は、予想が外れていればいいなと強く願った。


「何って、りんごは家政夫首ってことだよ」


 冷たい声。冷たい目。俺が大事にしたいと思っていた声が、目が、俺に冷たい言葉を浴びせる。


「…な、バレたからって首にすることないだろ! 第一、家にいないやつに決める資格なんてないだろうが!」
「それは同感。何してるのか知らないけど、ちゃんと帰ってきなよ……最近どうしたわけ?」


 双子に責められても深鶴先輩は言い返したりはしなかった。しなかったけど、自分の意見を訂正するつもりもないようだった。


「……し、た」
「りんご?」
「必要ないのなら、俺がここにいる理由はありません。短い間だったけど、お世話になりました」


 潔く、は俺のするべきことだ。
 泣きそうになるのを堪えて笑顔を作る。鶲は必死で止めてくれたけど、あんな風に言われたらここにはいられない。


「あ、買い忘れたものがあるんです。ちょっと行ってきますね!」


 ここにいたくなくて、バレバレの嘘を口にしながら俺は外へと飛び出した。

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