021 =====

 深鶴先輩と顔を合わせるのが、なんだか久しぶりのように感じる。
 あの夜以来、俺は先輩とまともに会話を交わしていなかった。実際、会うのすら久しぶりかもしれない。毎日顔を合わせていた人がいなくなれば、懐かしさを感じるのは仕方ないことだろう。

 先輩は今日の騒ぎについて知っているのだろうか。もし知っているからこんな時間に帰ってきたのだろうか。
 なんだか後ろめたい気持ちになって顔を伏せていると、隣に誰かが立つ気配がした。


「で、御堂がまた何かしたって?」
「さすがに深鶴のところにも届いてるか。うん。どうやらバレちゃったみたいなんだよね、りんごくんのこと」


 自分の名前が出て、反射的に顔を上げる。鷹人さんは苦笑気味に言うと、それきり黙ってしまった。まるで、深鶴先輩の出方をうかがうような、そんな風に感じた。


「まあ、御堂にはバレるのも時間の問題だと思ってたけど……まさかりんごに興味を持ってくるとはな」
「あれ、予想済み?」
「家も近いし、あいつも自宅組だろ」


 どうやら先輩は、俺のことがバレたことにあまり驚いていないみたいだ。それを知って少し安心する。

 しかし、次の一言に俺は何も言えなくなった。


「ちょうどよかったんじゃねーの。そろそろ潮時だろ」

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