015 =====

「な、なんで……じゃなくて、何のことだよ」
「誤魔化すの下手なんだから諦めたほうがいいよ」


 苦笑気味に言われたらそうせざるを得ない。

 でも、それとこれとは話が別だ。潔く諦めた俺を、行平おかしそうに笑う。その行平は、俺が春原家に厄介になっていることを知っているのかもしれないのだ。
 黙った俺に気付いた行平は、少し真面目な表情を作った。


「今までバレなかったことの方が、不思議だけどなー」
「そう、かな」
「まあ、春原たちは自宅組だし。ちょうど転入生が目立ってたから目眩ましになってたのかも。でも、」


 行平がスッと目を細める。普段は垂れ目でついつい流されてしまいそうになる彼の目だが、この時ばかりは違う。いや、逆らえないという意味では同じかもしれない。普段とのギャップに戸惑い、その迫力に飲み込まれる。


「新聞部に目をつけられてる。きっと、あることないこと全部が公にさらされるんじゃないかな」
「新聞部って…」
「普段は抱きたい抱かれたいランキングとか馬鹿みたいな企画ばっかりだけど……あいつらも飢えてるんだよ、学園を騒がすような大スクープにさ」


 転入生の時もすごかったんだよ、なんて行平の声は耳に入ってこない。
 大学なんて場合じゃないじゃないか。俺はこの学園にいられなくなるかもしれない。

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