011 =====

「さっきの、何だったわけ?」


 青葉が不機嫌そうに言った。俺にも東雲の行動の意図が分からなかったので、解説を求める。すると、東雲はもう1度ドアの向こうを気にしながら言った。


「今日の放課後、時間あるか?」
「何もないけど」
「俺も、あんまり遅くならないなら」
「木崎も呼んどけ。寮の部屋なら聞かれる心配もないだろ」


 察するに、人に聞かれてはまずい話らしい。俺は青葉と首を傾げながら先程のことを思い出していた。ドアの向こうには、一体誰がいたのだろう。
 教室に戻り新に話を伝える。俺は似たような反応をする新と放課後になるのを待った。


「それで、人に聞かせられない話ってのはなんなんだ?」


 東雲の部屋に集まるや否や、待ちきれないといった様子で青葉が口を開いた。東雲は、お茶と和菓子の準備をしていた手を休ませずに答えた。


「あの時、部屋の外には誰かがいた」
「そりゃあ、俺たち以外にも利用者はいるだろ。何もおかしいことじゃない」
「いや、ここ最近ずっとだ。初めは俺たちがいて入りづらいのかと思っていたが、どうもそうではないらしい」


 つまり、東雲はその誰かが俺たちのことを見張っていると言いたいのだ。

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