009 =====
今日は僕がモーニングコーヒーをいれてあげる。そう言って、鷹人さんはキッチンへと歩いていった。
少し気持ちが軽くなった。でも、それが深鶴先輩を傷つけていい理由にはならない。一緒にいたいって伝えるはずが、遠ざけてしまった。その事実は変わらないのだ。
小さくため息をつくと、後ろからぽふぽふと頭を撫でられた。ソファ越しに振り返ると、起きてきたばかりの鴇矢くんがこちらを見ていた。
「最近、元気ないね…」
「そんなことないよ? 元気元気!」
「嘘。ため息、多いよ……今だって」
「…ホント、この家の人たちはすごいなあ」
観念して認める。だって、この人たちには敵わない。
周りにも気を遣えるというなは、普通の人からしてみたらすごいことだ。何せ自分に余裕がないと出来ないことだと思うから。
「りんごは座ってて」
「え、でも朝御飯作らなきゃ」
「いいから。おれが…ハムエッグ、作ってあげる」
小さく微笑んで、鴇矢くんもキッチンに向かった。と、同時に鷹人さんが戻ってくる。温かなコーヒーを手に。
「ね、誰もりんごくんを責めたりはしないよ」
「みんな優しすぎるんですよ」
でも、ここに来れてよかったって思った。
≪≪≪|戻る|≫≫≫