007 =====
結局何も言い返すことが出来ず、先輩は部屋に行ってしまった。
そこで初めて自分の甘さに気付いた。俺は最近になってようやく自分の将来のことを考えるようになったけど、先輩は違う。いや、きっと春原家自体が違うのだろう。家柄のこともあって、俺よりも将来を考えさせられる場面はたくさんあったはずだ。そんな先輩が、将来のことを真面目に考えていないわけがない。
深鶴先輩の冷たい瞳の理由を理解すると、あとは後悔しか残らなかった。
俺はボーッとしたままいつの間にか眠りにつき、朝起きてきた鷹人さんに発見されるまでリビングのソファにいた。
「まだ暑いとはいえ、朝晩は冷えるんだから。次からは気を付けること、いいね?」
「すみませんでした」
素直に謝ると、鷹人さんは許してくれた。髪を撫でるように触られると、少しばかりくすぐったい。
鷹人さんは、一息間を置くとこちらを向いて言った。
「深鶴と何かあった?」
「え」
「昨日の夕飯までは普通だった。とすると、夜中とかに深鶴に会ったのかなって」
当たってる? そう尋ねてきた鷹人さんに、敵わないなと観念して夜中にあったことを話した。
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