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「騙し騙し勉強を続けていた俺よりも先に、両親の方がストップをかけたんだ。お前の絵は、縛られないからこそ今の形にある。俺が当主として成長した頃には、絵は描けなくなっているだろう……ってさ」
その言葉は、ハルさん自身の胸にストンと落ちた。受け入れていないだけで、自覚はあったんだと思う。
両親は恵まれたハルさんの絵を守るために、当主としてのハルさんを諦めたのだ。
「それでよかったわけ? 努力しようとか、あっさり見限られたこととか、僕なら諦めきれないよ!」
「だって、波留がいたからな」
「!」
正当な次期当主。ハルさんは、並越先輩になら任せられると思った。だから、自分は絵を描き続けることにしたのだ。弟が大好きでいてくれた自分のままで。
「……悪かったね」
「え?」
「色々と迷惑かけたから。完全に八つ当たりだったし……だから、美術で上を目指すのは諦める。譲ってあげるよ」
「じゃあ…!」
「僕は得意の音楽で目指すから、お互い頑張ろうね」
美術であろうが音楽であろうが、実技は実技。枠が減ったわけではない。そう甘くはないようだ。
でも。
朗らかに笑う並越先輩を見て、俺までも胸が軽くなったみたいだった。
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