042 =====

 少しずつ自分の気持ちを吐露する並越先輩に、少しだけ自分を重ねた。
 ハルさんの絵に心を奪われたのは俺も同じだから。この絵を描く人がいる大学に行きたい。その思いは、2人とも変わらない。2人ともハルさんのことを追いかけていたんだ。


「…相変わらずお前はひねくれてるなあ」


 ずっと黙っていたハルさんが口を開く。
 ハルさんの表情はとても穏やかで、でもちょっぴり照れが混じっていて……いや、俺が理解する必要はないのかもしれない。だって、それは並越先輩に向けられたものだから。


「元々は、俺が家を継ぐはずだった。でも、すぐに考え直さないといけなかったんだ」


 並越先輩が憧れて止まなかった頃の話。

 ハルさんは、養子ながらも次期当主になることを望まれていた。ハルさん自身もそれを受け入れていた。
 でも、結果としてそれを認めるわけにはいかなくなった。


「人の上に立つために、色々勉強を始めてからだ。最初は絵を描く時間が減ったからだと思った。でも、そうじゃなかったんだ」


 情けないなあ、とハルさんは笑う。

 決して苦しそうではない。寂しそうではあるけど、それはきっと、すでにそんな自分を認めているから。

 ハルさんは、自分でも気づかないうちに家を背負うプレッシャーに押し潰されそうになっていた。

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