041 =====

「先輩の絵、ハルさんのこと尊敬してるんだって、すごく伝わってきます」
「そんなでたらめ…」
「見る人が見たら分かります。ハルさんのタッチっていうか、癖っていうか……そのまんまだから」


 芸術分野の説明をするのはとても難しい。一言では言い表せられないし、感じ方は人それぞれ。
 でも、少なくとも、俺は並越先輩の絵を見てハルさんを感じた。それで十分じゃないか。


「…波留?」
「なんで、お前なんかに」


 黙ってしまった先輩に、藤岡先輩が声をかける。そんな優しさを払い除けて、並越先輩はキッと顔を上げた。少し怯んでしまったけど、その表情を見て安心した。
 俺の感じた何かは、間違いじゃなかったんだ。


「あんたの絵がずっとずっと好きだった。最初はただ純粋に好きだったけど、だんだん同じところに行きたいと思うようになったんだ。でも、僕なんか到底追い付けなくて、それでも同じ景色が見たくてひたすら頑張ったんだ。それなのに」


 並越先輩は、当然ハルさんが家を継ぐと思っていた。養子とはいえ、自分より優れた才能を持つ兄。そう思うのは当たり前だ。
 でも、現実は違った。家を継ぐのは自分で、尊敬した兄は才能を世界に発信することもなくふらふらしている。

 並越先輩にはそれがどうしても納得出来なかったんだ。

≪≪≪戻る≫≫≫

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -