039 =====
「で、どーゆうこと」
優勝した景品は後日配られると聞いて、帰路に着こうとした時のことだった。ガガッとスピーカーの音がして、俺を呼ぶ声が校内に響いたのだ。
「2年B組木之下、至急美術室まで来てくれ」という榊原先生の声は、機械を通してからか聞き慣れないものに感じた。
今日はこのまま帰るつもりだった俺が渋々美術室に来てみると、何やら勢揃いだったというわけだ。
並越先輩と藤岡先輩は借り物競争ぶり。榊原先生は呆れたような疲れたような表情をしている。そして、俺たちを集めた張本人。ハルさんはアイスを食べながらくつろいでいた。
「用がないなら帰りますよ」
「用ならちゃんとある。でもアイスが溶けちゃうだろー」
最後の一口を食べると、ハルさんは残った棒をもて余しながら並越先輩を見た。いつもの穏やかな表情、によく似た別の表情。どんな感情を浮かべているのかは分からなかったけど、俺までドキッとしてしまった。
「波留。美術で推薦狙うんだって?」
「…それがどうかしたの」
「なんで美術なんだよ。確かにお前は絵も悪くないけど、もっと他に…」
「そんな話をするために呼び出したわけ?」
並越先輩とハルさんが兄弟というのが、未だに実感が湧かない。血は繋がってないらしいから、見た目でどうこう言えるものでもないし。
でも、2人の会話から気の知れた仲であることは分かった。少し仲悪そうだけど。
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