038 =====

「隼臣ぃー!」


 横で叫ぶ転入生の声にハッとなる。慌てて前を向くと、ちょうど目の前を通り過ぎていく会長の姿が見えた。いつの間にアンカーに渡ったのだろう。
 普段があんな感じだからだろうか。必死な顔がすごくカッコよくて、不覚にもときめいてしまいそうになる。

 名前のごとく、会長はただ前だけを見据えて疾風のように駆け抜けていった。


「体育祭も終わりか、なんか寂しいな」
「何がだよ」
「祭りが終わるのも寂しいし、生徒会も入れ替わる時期だろ」
「そっか、そう言えばそうだったな」


 1位でゴールした会長を遠目で見ながら、すっかり忘れていた事実に気付く。
 会長たちは3年生、生徒会の引き継ぎをして卒業しなければならない。そんなのは当たり前のことなのに、会長が会長であることが当たり前すぎて忘れてしまっていた。

 もちろん、深鶴先輩も例外ではない。


「次の会長には誰がなると思う?」
「そりゃあ咲良だろ!」
「…汐見、それ誰だっけ?」
「りんごはもう少し周りにも関心持った方がいいぞ! 会計やってて、黒髪の真面目そうなヤツが咲良だ」
「それ褒めてないからな」


 体育祭は赤組の優勝で幕を閉じた。

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