034 =====

 はる、と聞いてすぐには思い当たらなかった。どちらかと言えば、一緒に走っていた人物から連想したと思う。
 榊原先生が言っていた話と繋がった。並越先輩の優秀なお兄さんというのが、ハルさんのことだったらしい。


「…似てないですね」
「直球だな、でもその通りだ。何せ俺と波留は血が繋がってないからな」


 とんでもないことをサラリと言う。お金持ちの家には、きっと俺たちには分からないような事情がたくさんあるのだろう。

 反応に困っていると、ハルさんは俺の頭を撫でながら言った。


「波留のことは要っちから聞いてる。今日はそのことも気になってきたんだ」
「榊原先生、が?」
「もしりんごも気になるっていうなら、体育祭が終わってから美術室においで」


 最後に髪をくしゃっと撫で付けて、ハルさんは行ってしまった。青組の方へ行ったということは、並越先輩に会いに行ったのだろう。
 ひらひらと手を振るハルさんを見ながら、本当に不思議な人だなと改めて思った。


「行ったのか?」
「うん」
「そうこうしてるうちに、騎馬戦終わっちゃったよ」
「結果は?」
「柚流がめちゃくちゃにして強制終了」
「最近は結構まともになってくれてると思ったんだけど…」


 次はいよいよ最後の競技、選抜リレーだ。

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