031 =====
並越先輩の手には、俺のと同じ紙が握られていた。
「一緒に来て」
「借り物、ですか?」
「『名前にひらがなが入ってる人』なんて、他に思い付かないからね」
確かに、女の子にはある名前だが男でひらがなは珍しいかもしれない。でもそれ以上に、先輩が俺の名前を知っていたことに驚いていた。
戸惑いながら頷くと、先輩はぐいぐい進み始めた。後から「ぬ」「ね」「の」の3人もついてくる。
ルール上、借り出された人が助言することは禁止されているのでほぼ無言だ。拓水はさっきから何か言いたげにしている。
「あ!」
「な、何?」
「並越の『な』!」
「は?」
これであと1人。「に」から始まる人さえ見つけられればお題をクリア出来る。
早くゴールしたいであろう並越先輩を引き留めながら、俺はお題の内容を説明した。
「『に』だったら1人心当たりがあるけど……呼ぶ?」
「お願いします」
ゴール目前でテンションの上がった俺は、考えることをしなかった。並越先輩が生徒会の一員であることはもちろん、その先輩の友人がどんな人であるかなんてまったく考えなかったのだ。
結果がこれである。
「仁桃のことは知ってる? 生徒会の書記なんだけど」
まさか生徒会2人を引き連れてゴールすることになるなんて。背の高いにとうさんとやらを見上げながら、俺は呆然とした。
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