024 =====

 目の前にある紙に、無意識に顔が緩んでしまう。
 タイミングを失ってしまって出せていなかった入部届けを、今日ちゃんとした気持ちで出すことが出来る。その事実が嬉しくて、朝から用紙を見てはお昼休みが待ち遠しく思ってしまう。

 新にも「何かいいことあったのか?」なんて聞かれる始末で、俺は他の人に聞こえないように報告をした。新は自分のことのように喜んでくれた。


「え、じゃあ本格的に絳河大学目指すのか?」
「うん。俺の背中を押してくれる人がいるって気付いたから、頑張ってみようかなって」
「なんか寂しい……オレも絳河にするー!」


 ちゃんと調べようと進路指導室にやってくると、またしても青葉と東雲がいた。
 2人も真面目だなあなんて思っていたが、新から聞いた話だと転入生から逃げているだけらしい。確かに、転入生は進路とか将来とかにはまだ興味がなさそうだ。


「そんな決め方でいいわけないだろ」
「えー、これも1つの案だって。好きな人と一緒の大学に行きたい、よくある恋愛ドラマの展開だろ?」
「す、好きな人って…」


 不意をつかれた言葉に赤くなっていると、東雲が時計を指差した。美術室に向かう途中で寄ったのだが、思いの外時間をとってしまったらしい。


「青葉、東雲。じゃあ俺行くから」
「え、じゃあオレも美術室でお昼食べ……いった!」
「お前はもう少し真面目に進路考えてからにしろ」
「だからって叩かなくてもいいじゃん!」


 後ろで2人のやりとりが聞こえる。やっぱり仲いいなあ。

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