021 =====
「…でも、並越先輩の動きは気になるよね。少し気をつけてみた方がいいかもしれない」
並越先輩が榊原先生に絵の指導を頼んでいることはすでに話した。並越先輩が一般の家庭ならともかく、わざわざ榊原先生に頼んだ理由が引っ掛かるようだ。
俺を出し抜くため? 並越先輩はいつから俺のことを知っていたのだろう。接点も何もないはずなのに。
「今は別の指導者を探すべきじゃないかな」
「別の? …まさか」
「違うよ、2人が考えてるようなことじゃない……我が家にだっているじゃないか。美術に関することなら、鴇矢が1番頼りになるんじゃないかな」
鷹人さんの視線の先には、睡魔に負けた鴇矢くんがいた。声は届いていないはずなのに偶然にも頷くものだから、俺はつい笑ってしまった。
なんで俺は、こんなに素敵な人たちに頼ろうとしなかったんだろう。
「…ありがとう、ございます」
「お礼は合格してからだろー! まあ、あと1年は先の話だけどさー」
「先輩の動向はさりげなく見ててあげるから、りんごは安心して絵に集中すればいいよ」
「勉強も忘れちゃ駄目だよ。内申点が大事なのは知ってるよね?」
こくりと頷く。
いくら推薦とはいえ、内申点が悪いと通るものも通らないだろう。
「勉強なら僕らにも教えられる。これまでのお礼をさせて」
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