017 =====
ただのデッサンでは試験監の目には留まらない。先生は、モチーフを3次元で描くことを進めてきた。
台に置かれているもの──例えば林檎やリボンなんか──をそのまま描くのではなく、そこから想像で3次元にするのだ。宙に浮く林檎は、置いてあるのとは違った影の入り方をする。リボンも林檎の周りを舞い、空想のようなデッサンとなる。何より配置が難しい。
でも、それが近道なら。
「デッサンなら家でも出来ますし、頑張ってみます」
「分からないところとかあったら、メールでいいから聞けよ? これ、参考に。卒業生の置いていったものだが、上手いから参考になるだろ」
「ありがとうございます!」
顔も知らないやつには負けたくない。そう、強く思った。
意気込んだ結果、なかなかの荷物になった。
俺の手には練習によさそうなモチーフが入った紙袋。大きめの袋に入った本物でない林檎やバナナが、ガサガサと音をたてる。
そんな俺を、誰かが笑った。
「わー、必死だね」
「だ、れ…?」
「僕を知らないの? へぇ、この大学では貴重な存在かも」
彼には見覚えがあった。
彼はこの間の大学祭でミスコン1位の人物で、生徒会の1人だ。
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