013 =====

「何て言うかさ」


 ぐだぐだと悩む俺に、鶫はしばらく黙っていた。だから、突然口を開いた時は少し驚いてしまった。


「俺ら、そんなに信用ない?」
「え?」
「深鶴じゃないけど、俺らはりんごの主なんだよ。りんごが頼ってくれなきゃ、立場ないよね」


 いつも通りの冷静な表情、とはいかないようだ。無意識に唇に力が入り、拗ねた表情を浮かべる鶫と目が合う。

 確かに、雇われている身としては話した方がいいのかもしれない。自分で解決出来るならまだしも、春原さんたちに迷惑がかかるであろうことは回避出来そうにない。
 だったら、それを知らせるのは早い方がいい。


「そう、だね」
「? りんご?」
「ちゃんと、相談します。でも、もう少し待って下さい。俺の中で、整理されるまで」


 今度は逃げない。そのつもりで告げたのに。
 気付けば鶫に手を掴まれ、部屋へと移動していた。肩を押されてベッドに座ると、鶫は近くの椅子に腰掛ける。


「俺は十分待ったと思うんだよね」
「えっと、つまり?」
「今日は話すまで逃がさないってこと。ほら、話してるうちに情報が整理されたり気持ちが楽になったりするって言うし」
「……はぁ」


 結局俺は逃げられず、進学についての相談をすることになったのだ。

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