009 =====

「あれ、新はそのまま進学するんだ?」


 手元を覗き込んだ青葉がきょとんとする。

 そこには確かに絳河大学の文字があった。
 新はずっと法学部に興味を持っていたから、多分そうだろうなと思っていた。絳河大学の法学部は結構いいって聞いたし、就職率も悪くない。新は頭もいいから、きっと問題なく進めるだろう。


「東雲はどうすんの?」


 話をふると、東雲はうっすらと目を開けた。寝てたわけじゃなかったらしい。


「…家業継ぐ」
「家業ってヤのつくお仕事とか? …いった、殴らないでよー」
「うるせぇ、うちは和菓子屋だっつの」


 しれっとすごいことを言った気がする。東雲と和菓子……なんだか似合わないようだけど興味がそそられるなぁ。

 顔に出ていたのか、東雲がこっちを見た。


「言っとくが、ほとんど作れねぇからな」
「え、そうなの?」
「本格的なのは高校卒業してからにしてもらったんだよ」


 こうして話すとみんなちゃんと考えてたんだって分かる。目の前のことでいっぱいいっぱいで、未来を考えてたなかったのは俺くらいか。

 少し落ち込みながら絳河大学のもう1つのキャンパスのパンフレットを見る。
 すると、そこには魅力的な言葉が並んでいた。


「授業料、半額…!?」

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