008 =====

「で、なんで進路指導室?」
「俺には明らかに情報が足りてないから」
「そうやって打ち明けるのを先延ばしにしてるだけだろー」


 そう言いながらも新は付き合ってくれる。

 あの日、家に帰ってから俺の決意は揺らいでしまった。夕飯の準備に取りかかりながら話の順序を組み立ててみたけど、どうもまとまらない。むしろ、まとめればまとめるほどハルさんに丸め込まれたみたいになる。実際そうだけど。
 結局言えなかった俺は、あれこれ理由をつけて今ここにいる。打ち明ける前に、色々と知っておかなくてはならないことはたくさんあるのだ、と。


「あれ、りんご?」
「青葉も、調べ物?」


 進路指導室には青葉と東雲がいた。東雲は椅子で寝てるけど。この2人もなんだかんだで仲いいよな。

 この教室には、生徒が自分で将来を考えられるようにあらゆる大学や職業についての資料が揃っている。俺はハルさんと実際に大学まで行ったけど、情報としてはまだ足りない。入試や学科、就職率、そういった文字情報が欠落してる。
 今日は、それを調べに来たんだ。


「青葉はもう大学決めてんの?」
「うーん、ぼちぼち? りんごは?」
「俺も微妙」


 苦笑する俺らの横で、新は1冊の本を読み始めた。

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