006 =====
どうせ部費で買ったものだからということで、初めての針金に挑戦させてもらうことになった。本当なら久しぶりに油絵とかもやりたかったけど、時間がかかりすぎるから。
針金はもちろん、粘土とか彫刻とかの立体は、ちょっと苦手だ。空間的なものが上手くいかない。だから数学も駄目なのだろうか。
「俺も針金はやらないからなぁ……で、何作るんだよ」
「花とかなら、簡単かなと」
「花ねぇ……とりあえず、確かこんな感じでぐるぐるやってたぞ」
ハルさんの記憶を頼りに指導を受ける。針金があるってことは、針金を扱う人がいるってことだ。つまり、ここに来ればそれを教わることも出来る。
針金だけじゃない。やったことない分野もだけど、水彩だって油彩だってもっと世界が広がる。それってすごく楽しいことのような気がする。
「ハルさんの絵とかは置いてないんですか?」
「作品は置いとくとかさばるんだよなー…」
「え、ないんですか!?」
「…部屋の外にあるけど」
「あとで見せてもらいますからね」
「はいはい」
ハルさんの思惑通りなのだろうが、俺はすっかりこの大学の虜になってしまっていた。
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