036 =====

 しばらく美術部の作品を見て回ると、出口のそばにノートがあるのを見つけた。俺が1年の時も置いていたが、これは感想ノートだ。作品についての感想を自由に書いてもらおうと置いているのだが、実際は好き勝手なコメントばかりであまり意味がなくなっている。
 そのノートの1番新しいページに、何やら真面目な文章が並んでいた。


「あ、それ木之下の絵に対する感想な」
「え」
「『これ描いたのって黒髪平凡な家政夫か?』って聞かれてな。お前、ハルと知り合いか?」


 まさか、榊原先生の口からハルさんの名前が出てくるとは思ってなかった。

 どうやらハルさんは美術部所属で、先生とも面識があったらしい。高等部の頃から才能があったらしく、先生も自分のことのように誇らしげに話してくれた。
 そしてさりげなく「大学はどうするんだ?」と聞いてきた。そんなに気になるのかな、俺の行き先。


「そろそろ2人を案内しなきゃなんで、失礼します」
「はいはい。春原、元気でな」
「榊原先生も、また機会があれば」


 鷹人さんと鴇矢くんを言い訳に使って教室を出た。案内をしながらも頭の中は、ハルさんが書いてくれた感想のことばかりだった。

≪≪≪戻る≫≫≫

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -