032 =====

 家庭科室の一角を借りて、俺は2人の事情を聞いた。なぜ2人がここにいるのか、いつから待ってたのか、転入生はどうしたのか、などなど。
 で、聞いたところ。どうやら青葉と東雲は転入生と別行動をとっているらしい。


「オレらは親衛隊がいるとはいえ、一般生徒なわけ。柚流のことは大切だけど、自分の身も可愛いんだよね」
「今近付いても面倒事ばっかりになるだろうからな、生徒会も引っ付いてるし」


 転入生のお守りも大変だ。俺は素直に2人に同情した。


「でさ、りんごは仕事してていいよ?」
「え?」
「オレらはここで休ませてもらえればそれでいい。こいつと2人でってのが少し不満だけど」
「それはこっちのセリフだ! …迷惑かけにきたんじゃないんだが、悪いな」


 俺は、お言葉に甘えさせてもらうことにした。今からなら頑張れば他のメニューも午後には間に合うかもしれない。そう思って早速作業に取りかかった。
 クラスメイトたちは何も言わなかった。やはり気にはしてるみたいでチラチラと様子をうかがうことはするが、それまで。作業に集中していたし、人気者に近づいた俺を非難する人もいなかった。


「…あとでりんごの作ったヤツもらえないかな」
「上手く言えばもらえそうだよな」


 もちろん俺は、2人の会話を知るよしもなかった。

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