030 =====

 時間もなくなってきたので、俺たちはクラスに戻ることにした。
 ハルさんからもらったパンフレットは美術室の棚に置いてきた。双子に見つかったら面倒だし、俺の画材があるから誰も持っていかないだろう。


「いい人だな、ハルさんって」
「まぁ、ね」
「?」


 煮え切らない返事を聞いて、新が首を傾げる。いい人だよ、確かに。でも春原さんたちと過ごした夏休みの出来事を思い出すと素直に頷けないんだ。ちょっといけすかないところもあるし……でもあの人の絵は好きなんだよな、悔しいことに。


「戻りましたー」
「おかえり! 遅かったな、りんご」


 出迎えと同時に抱きついてきたのは鶲だ。ひっぺがしても後ろから乗っかってくるから重たい。
 つか文化祭だからってベタベタしすぎな気がする。親衛隊とか大丈夫なんだろうか。そもそもクラスで浮いたりはしないだろうか。


「何難しい顔してんの?」
「……いや、なんでもない。とりあえず離れろ、俺駿河のトコ行かなきゃ」


 クラスに駿河の姿はない。ということは、家庭科室にいるのだろう。
 俺は離れようとしない鶲とついでに新に「ちゃんと仕事をするように!」と言い聞かせ、少し遠い家庭科室に向かった。

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