028 =====

「これ、見てもらいたくて」
「これは…?」
「大学のパンフレット。俺がいる方のキャンパスのヤツな」


 美術室で渡されたのは、絳河学園のパンフレット。もちろん大学のだ。以前もらったポストカードと同じロゴが入っている。


「来てくれなそうだったから、もう1度アプローチしにきた」
「え」
「ついでに母校見学」
「ええ!?」


 ついていけなくてテンパっていると、横からパンフレットを奪った新がページをパラパラとめくり始めた。
 中はすべてカラーで、教授のコメントや行事、就職率など様々だった。でも、俺にとってはどれも遠い未来のことのように思えた。だってまだ2年生なのに、もう進路のことを考えなくてはならない。今の生活だけでいっぱいいっぱいなんだ。

 不安が顔に出ていたのか、ハルさんは俺の頭を撫でた。


「りんごはこーゆうの見るの初めて?」
「そう、ですね……進路についてはよく聞かれますが、パンフレットはまだあんまり」
「そっか、じゃあ将来の夢とかは?」
「夢……夢、かぁ」


 父さんを支えながら楽しく暮らせたらいい。そんな漠然としたものしかない俺には、その質問はとても難しく感じられた。

≪≪≪戻る≫≫≫

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -