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「これ、見てもらいたくて」
「これは…?」
「大学のパンフレット。俺がいる方のキャンパスのヤツな」
美術室で渡されたのは、絳河学園のパンフレット。もちろん大学のだ。以前もらったポストカードと同じロゴが入っている。
「来てくれなそうだったから、もう1度アプローチしにきた」
「え」
「ついでに母校見学」
「ええ!?」
ついていけなくてテンパっていると、横からパンフレットを奪った新がページをパラパラとめくり始めた。
中はすべてカラーで、教授のコメントや行事、就職率など様々だった。でも、俺にとってはどれも遠い未来のことのように思えた。だってまだ2年生なのに、もう進路のことを考えなくてはならない。今の生活だけでいっぱいいっぱいなんだ。
不安が顔に出ていたのか、ハルさんは俺の頭を撫でた。
「りんごはこーゆうの見るの初めて?」
「そう、ですね……進路についてはよく聞かれますが、パンフレットはまだあんまり」
「そっか、じゃあ将来の夢とかは?」
「夢……夢、かぁ」
父さんを支えながら楽しく暮らせたらいい。そんな漠然としたものしかない俺には、その質問はとても難しく感じられた。
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