018 =====

「うん、カッコいいカッコいい」


 一瞬青葉に見惚れたが、またすぐにブラウニーを切ることに集中する。大きさはそろえなきゃならないもんな。


「……、りんごー」
「んー?」
「冷たい」
「だって中身はいつもの青葉だし」


 カッコいいとは思ってるけど。

 チラッと青葉の表情を見ると、つまらなそうにしているのが見てとれた。拗ねたように唇を尖らせる青葉に肩をすくめると、俺は汚れてない方の手で青葉の頭を撫でた。


「…ッ」
「セットくずれるから終わりな」
「りんご」
「まだ何かあんの? そろそろ転入生動き出す気がするんだけど」
「これ聞いたら帰るから。ねぇ、りんご」
「ん?」
「木崎と東雲とオレだったら、だれが1番?」


 思わず顔をあげた。青葉は真剣に、でも泣きそうな目で俺を見ていた。


「みんな、じゃ駄目なんだよね」
「うん」
「やっぱり新かな」
「……、そう」


 あからさまにしゅんとする青葉の口に、俺はちょうど切り終えたブラウニーを突っ込んだ。


「それ、おごりな」
「!?」
「大丈夫、青葉もちゃんとカッコいいから」


 背中を押してカーテンの外側へと追い出した。青葉はまだ何か言いたそうだったけど、すぐさま転入生に捕まって戻ってくることはなかった。
 振り返った時の青葉の耳が、赤かったような気がした。

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