014 =====
「他に話しかけ方とかあるだろ……」
ため息をつきながらお盆を拾う。東雲があっさり解放してくれたからだ。
見上げた先には以前と変わらぬ姿。なんだかちゃんと話すのは久しぶりな気がする。この前だって話したのに、不思議だ。
「で、何?」
「今日、始まってすぐに柚流がそっちに行くと思う」
「…転入生が?」
東雲の話によると、転入生はほとんど仕事を任されなかったらしい。そりゃあ、ホストやるのに平凡じゃね……俺が言えないけど。
最初はぐずってた転入生だが、持ち前のポジティブさで今では開き直っている。そして開始直後、新や俺を誘いに行くだろう。それが東雲の言った内容の全てだった。
「はぁ、また面倒なことに…」
「忠告はした」
「ちょ、東雲! なんでそんなこと俺に…ッ」
東雲は転入生の取り巻きだったハズなのに。
呼び止めたら東雲はかすかに足を止め、こちらを振り返った。
そして。
「いずれ話す。その時まで待ってろ」
今まで1度も見せたことのない柔らかな笑みで微笑んだのだ。
不意討ちに動けなくなった俺に構うことなく、東雲はどこかへ行ってしまった。きっとクラスに戻ったのだろう、じゃなきゃ転入生がうるさいからね。
でも俺は、東雲がいなくなってからもしばらくそこから動けずにいた。
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