011 =====

「僕のもらって下さい!」
「いえ、僕のを!」
「僕が作ったの食べてほしいです!」


 騒ぎの中心にいるのは双子だ、もちろん衣装をつけた。
 基本的なデザインは新のと同じみたいだが、細かいところに個性を出しているようだ。双子のはベストの後ろがちょっと長くなっているようで、執事の着る服のようになっている。

 双子だからか、鶫と鶲の衣装に違いはないみたい。
 でもあれじゃあ見分けが出来ないじゃないか、他の人みたいにデザインを変えればいいのに。


「ねぇ、りんごが作ったヤツないの?」


 鶲が近くの子に問う。余計なことはしないでほしい。


「え」
「なんか、試食用のお菓子作った時に仕切ってたんでしょ? だったら1番作るの上手そうじゃん」
「鶲、はっきり言えば? 下手なの食べたくないって」
「鶫が言ってくれたしいいやー」


 周りで自分のを食べてもらおうと頑張っていたクラスメイトたちは固まってる。無理もない。
 もっとオブラートに包めって! そして巻き込むなって!


「…なんで俺の名前知ってるの?」


 あくまで、あまり面識がないように装う。


「だって特徴的だったから。仮にもクラスメイトだし、名字覚えてないし」
「試食、したいですか?」
「そりゃあもう!」
「じゃあどうぞ。おいしくないのはありませんから」


 俺がつきっきりだったんだ、味は保証する。代わりに自分のは作れなかったけど。
 でも、とりあえず。双子の説教は帰ってからしようと思った。

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