010 =====
味見も終わり、そろそろ試食会が始まる。
食べ始めれば一安心。そう思って座っていると、後ろから体重がかけられた。
「お疲れ、なんか頑張ったんだって?」
「新! もうくたくただよー」
抱きつき返しながらちょっぴり愚痴る。なんだかんだで疲れていたみたいだ。新を見たら気が抜けてしまって、なんだかどっと疲れた。
新は「よしよし」と子どもをあやすみたいに頭を撫でてきたけど、それさえも気にならない。
「あ」
「ん?」
「今更だけど、それが衣装?」
「らしい。これでもだいぶラフな感じにしてもらったんだけど」
新は試着の真っ最中で、清潔感溢れるワイシャツに黒のベスト、腰にはエプロンをつけている。喫茶店従業員のような衣装を身にまとう新は普段よりも数倍カッコいい。
「簡単なアクセサリーとかつけてもいいかもね」
「だな」
「にしてもさすが……似合ってる」
「褒めても何もないから。さて、試食のお菓子をもらってくるか」
俺が新を解放しぼんやりしていると、お菓子を並べているテーブルの方が何やら騒がしくなった。
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