009 =====
「恥ずかしいんだけど、さ……」
「うん?」
「道具の使い方とか分かんないし、出来ればついててほしいっていうか…」
眉を下げ、困ったような表情で見つめてくるのはクラスでも席の近い梨緒くんだ。
梨緒くんがそう言うことで、周りもなんとなくざわざわし始めた。不安なのはやっぱりみんな一緒のようだ。
「……分かった」
「え」
「半分ずつに分けよう。前半はブラウニーとホットケーキ、後半はドーナツとスコーンにしてさ。大丈夫、時間はある」
そうと決めればすぐだった。手の空いてる人には見ててもらいながら、生地を作って。それを焼いてる時間に後半に取りかかる。そうして、なんとか時間内に4つのメニューを作り上げた。
「なんとか完成した…」
「お疲れ」
「駿河! そっちもお疲れ様」
今回のことを通して、駿河とはすごく仲良くなった気がする。何せ、お菓子をまともに作れるのは俺ら2人。そりゃ、仲良くもなる。
「はいこれ」
「?」
「俺らの分。作った側が食べなくてどうするの」
2人でブラウニーを手にし、一緒に口に運ぶ。頑張った分、甘さが体に染み渡った。
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