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 あっさりとした俺の答えに、鷹人さんと鴇矢くんは驚いた表情をした。おそらく、俺が行きたいと言うと思っていたんだろう。


「興味があるのは事実です。でも、俺の仕事は春原家の家政夫ですから」


 そう、あまり余裕がないのだ。この役目を課せられてから部活をやめたわけだし。

 それに。


「大学は、絳河に行くつもりないので」
「え」
「行かない、の?」


 コクリと頷く。

 うちは父と子の2人暮らし。高校はなんとか通えてるけど、さすがに大学ともなると学費は馬鹿にならない。
 しかも自分が将来どうしたいか分からないうちに絳河の文化祭なんか見てしまったら、絶対行きたくなる。断言出来る。

 俺はひそかに、大学に行くなら学費の安いところにすると決めていた。


「春原さんのところでいつまでもお世話になれるわけじゃないしね」
「え?」
「あ、いえ……じゃあ、もう遅いですし部屋に戻りますね」
「あの、りんごくん」
「? …なんですか?」
「……いや、なんでもない」


 俺は一礼して鴇矢くんと部屋に戻った。

 こうして今年の夏は、穏やかながらもほんの少しの激しさと、1つの不安を残して過ぎていった。

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