028 =====

 色々あった1日が終わり、疲れもピークに達していた。「何か美味しいものを」と思ったが、結局出来たのは素麺だけだった。
 まぁ、春原さんたちも疲れていたらしく、文句も言われなかったのだけれど。


「…それ、さっきもらってたやつ?」


 夕飯後、リビングにあるソファーで休んでいるとお風呂からあがった鴇矢くんに手元を覗き込まれた。それとは、ハルさんにもらったポストカードのことだ。

 鴇矢くんはまだ暑いのか上を着ておらず、バスタオルがかかっただけになっていた。髪からも雫が滴るのを見て、俺は鴇矢くんを自分の前に呼んだ。いくら夏でも風邪ひいたら大変だし。
 俺はドライヤーを持ってくると、ポストカードを鴇矢くんに渡してからスイッチをいれた。


「鴇矢くん」
「?」
「今度、一緒に絵とか描こうよ」
「……」
「だからその時はさ、画材貸してね」
「…うん」


 俺の位置からは、鴇矢くんが笑っているのは見えなかった。

 髪を乾かし終わりスイッチを切る。鴇矢くんが珍しく声をあげたのは、それとほぼ同時だった。


「ど、どうしたの?」
「りんご」
「え?」
「これ、この大学」


 指差すのは先程のポストカード。下の方に書かれた大学名に、俺も驚くことになる。


「絳河、学園…?」

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