026 =====
「空気読みなよ、せっかく丸く収まるところだったのに」
「だって放置はひどいだろ!」
「そりゃあ、負けたッスからね…」
「そうそう、黙っとけ」
4人が話しているところを見ていると、なんだかうらやましい気持ちになった。気の置けない友達、というところだろうか。
なんてことを俺はぼんやり考えていたのだが、まだお礼を言っていないことに気がついた。
「あの、ありがとうございました」
わけの分からないことに巻き込まれ、一時はどうなることかとも思った。でも、なんだかんだで楽しかったのだ。
少し子どもっぽくて負けず嫌いな秋良さん。爽やかで優しいけどちょっぴりキツイ星夏さん。後輩気質で人懐っこい冬雪さん。そして、口は悪いけどとても頼りになるハルさん。
たった数時間しか一緒に過ごしていないのに、こんなに楽しくて。まさか離れ難いと思うことになるとは微塵も想像してなかった。
「オレらこそ、ありがとな。付き合ってもらって」
もう告げることは何もない。繋ぐものも、見つからない。
そう理解した途端寂しくなった。
「…夕飯」
「?」
「夕飯を、ご一緒しませんか?」
そう言ったのは、ほぼ無意識のうちだった。
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