024 =====
「戦略として提案したのは俺だ。でも、それは全員同意の上でのことだったんだよ。念のため言うけど」
「りんごが怒るのは予想がついてたけど、勝つにはそれしかなかったから」
「オレらはりんごの雇い主だからな。守る義務がある。そんなオレらが負けたりはしないのさッ」
次々と明らかになる事実に、俺はどうしたらいいか分からなくなる。
じっと下を見つめていると、突然手をギュッとされた。弾かれるように顔を上げれば、そこには不安そうな鴇矢くんの姿があった。
「……例え、りんごが悲しむことになっても。おれたちはりんごに勝つ……そう、決めてたんだ」
「…どう、して?」
「おれらは、りんごの雇い主だよ…? そして、天下の春原なんだ。何者にも負けるわけにはいかない、それが例えりんごでも」
まだ頭の中はぐちゃぐちゃだった。さっきまでの怒りや複雑な思いも一緒に巻き込まれて、感情までもが渦巻いている。
でも、春原さんたちの言いたいことが分かったから。
「家庭科対決で負けた家政夫ですよ?」
「料理の出来では完全に俺の負けだった、それは認める」
「雇い主のこと、応援出来なかったんですよ…!?」
「それは立場のせいだから仕方ないよ。それに、雇い主だからといって無理に味方する必要はないしね」
「オレは応援してもらったけどな」
久しぶりに笑えたような気がした。
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