017 =====
この勝負、俺は勝利を手にしたかのように思えた。しかし、そう簡単ではないことを思い知らされる。
「今回の勝負、りんごが出てくることはお見通しだった」
「!? …深鶴先輩!」
「だから考えたんだよ、公平に且つりんごを敗る手段を」
ニヤリと、しかしカッコよく笑う深鶴先輩の作戦はこうだ。
料理の腕では絶対敵わない。だったら別のところで判断するしかない。そこでジャッジを海の家にいる人に委ねたのだ。
「鶫が作ったオムレツと、りんごが作ったお好み焼き。おいしいと思った方に票を入れろ」
「頑張って作ったから、食べてくれると嬉しい」
深鶴先輩が動き出してから、ペースはすっかり向こうに持っていかれている。ちゃっかり鶫もアピールしてるし、その微笑みに女性客は首ったけだ。
「…ズルいですよ」
「料理が出来ない俺らには、これくらいのハンデが必要だろ」
「卵料理が出来れば十分です……客がみんなさくらってことはないんですよね?」
「それはねーよ、ちゃんとフェアだ」
苦し紛れに尋ねるが、先輩は余裕そうだ。
結果はまぁ、分かっていたけど負けた。
自信があったからこそ、かなりショックだった。きっとみんな、鶫に見とれて味なんか分かんなかったんだ。そう思うことにした。
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