014 =====
「次は要注意だな」
秋良さんがそう言って春原さんたちを睨み付けた。というのも、次に俺が引いたのは音楽と書かれた紙だったのだ。
音楽勝負には秋良さんと深鶴先輩が出る。つまり、因縁の対決というわけだ。一方的に。
「りんご、あいつの歌聞いたことあるか?」
「え? いや、ないです」
「ちッ……使えねぇ」
「先パイ、言い過ぎッス!」
それにしても、この4人もなかなか個性が豊かだ。まだ1時間ちょっとしか行動を共にしてないとはいえ、とても楽しい時間を過ごしている。巻き込まれた感は否めないけど。
でも、個性の豊かさなら春原さんたちだって負けてない。
なんだか、早く5人の元に帰りたくなってしまった。
「ルールは簡単、このカラオケ採点で高い点数を出した方が勝ちだ!」
「ん」
「歌うのは1曲のみな、まずはオレからいかせてもらうぜ」
これだけ自信満々なのだから相当な歌唱力なのだろう。誰もがそう思った。いや、正確には一部を除いてそう思った。
「……ハルさん」
「何?」
「なんで秋良さんを音楽勝負に出しちゃったんですか」
「あいつ、言い出したら聞かねぇし。それに、自覚ないんだよ」
渇いた笑みで告げられたハルさんの声を聞きながら、俺は彼が音痴であることを認めるしかなかった。
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