003 =====

 こちらについたのが昼過ぎだったこともあって、今日はみなさんお疲れのようだ。簡単に片付けを終えてリビングに戻ってみたけど、誰もいなかった。
 俺はあらかじめ冷蔵庫で冷えていた麦茶を2人分ついで、部屋に戻った。


「りんご……どう、だった?」
「うん、誰もいなかった。やっぱりみんな疲れてるんじゃないかな」


 麦茶を鴇矢くんに渡して椅子に座る。鴇矢くんはベランダに出て海を眺めていた。
 夕方といえどまだ暑い。でも、海の近くだから少しマシかもしれない。潮風が気持ちいい。


「んー…さてと」
「…りんご?」
「そろそろ夕飯の準備しなくちゃ」
「手伝う」
「! …ありがとう」


 鴇矢くんと過ごしてるとこっちまでふわふわしてくる。見てて和むんだよね。
 普段同じ学園に通う双子や先輩と違って、鴇矢くんと鷹人さんは接する機会が少ない。だからこの別荘にいる間にたくさん話せたら、というのが密かな目標だったりする。もちろん双子や先輩とも今まで通り接するけど。


「冷やし中華でいいかな」
「うん、好き」
「よかった」


 持参のエプロンを持ちながら、俺は鴇矢くんに笑いかけた。

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