001 =====
海沿いの別荘で優雅に夏を過ごしてみたい。そう思ったことは何度もある。しかしそれは所詮夢、現実はそうはいかないのが世の道理。
そのハズだった。
「……」
「ここがその別荘だよ。自宅より小さいけど勘弁してね」
「いえ、十分です」
浜辺に近いところに建てられたそれは、横文字が似合いそうで、これぞコテージって感じだった。大きさも普通の一軒家の2倍はある。まぁ、春原さんたちの感覚では小さいらしいのだが。
中も綺麗だった。コテージと言えど靴は脱ぐらしく、入ってすぐのところはリビングになっている。埃1つないのは、俺たちが来る前に掃除でも頼んだからだろう。
春原さんの自宅とはまた違った豪勢さにぼんやりしていると、鷹人さんは荷物を下ろしみんなを見回して言った。
「さて、それじゃあじゃんけんしようか」
「…え?」
「あ、そっか。りんごは知らないんだよな。実はここ、部屋は結構あるくせに寝室は3つしかないんだよ。しかもダブルベッド」
鶲の話によると、毎年じゃんけんで部屋割りを決めているんだとか。誰だってダブルベッドは嫌だ。そこでじゃんけんで勝った人が1人部屋を獲得出来ることにしたのだ。
しかし今年は俺を含めて6人。一体どうするつもりなんだろう。
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