022 =====

 この3人を言いくるめることが出来ればなんとかなるかもしれない。そう思っていたのに。
 先輩たち3人は意外に気が短いらしく──いや、おそらく隊長であるこの先輩の気が短いんだろうが──さっさと誰かを呼んだ。ドアが開き、入ってきたのはもちろん救世主などではなく、気味の悪い笑みを浮かべたガタイのいい生徒数名だった。


「好きにしていいよ。特に杏の方はめちゃくちゃにしてやって」
「いいんだな?」
「うわー…間近で見ると可愛いなぁ、小さいし白いし」
「それに比べてこっちはずいぶんと普通だな」
「いやでもよく見ると可愛くね? 白いし」
「じゃあお前が相手しろよ」


 口々に話しているのが聞こえる。暗がりのせいで顔がちゃんと見えないので、人数が5人だと判断することしか出来ない。

 なんとか杏先輩だけでも逃がしてあげたい。
 この件に巻き込んでしまったのは確実に俺だ。さっきの話から、完全に標的が先輩になってしまっているし。

 それに、杏先輩さえ逃げることが出来ればこの場所を誰かに知らせることが出来るのに。


「何ぼんやりしてんだ? これから楽しもうって時に」


 このタイミングで考え事はするべきではなかった。

 こんな状況なのに思考はとても冷静で、俺は手を押さえつけてくる相手をぼんやりと見つめていた。でも、確かに体は震えていたんだ。

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