015 =====

「…ははッ、そんなに面白いか?」


 会長の話に夢中になっていると、いつの間にか手は自由になっていた。そして、正面には笑いをこらえる会長の姿。
 俺はすっかり聞き入ってしまったことに恥ずかしさを覚えた。逃げ出すチャンスを作るハズが、逆に引き込まれてしまうなんて。


「安心しろ」
「え?」
「鷹人先輩の気をひきたいのは事実だけど、それにお前を利用する気はなくなった」
「ええ!?」


 先程まであんなに怖かったハズなのに、偉そうに笑う会長は全く怖くなかった。むしろすべてを虜にしそうな笑みに、うっかりときめきそうになるくらいだ。


「あ、お友達が来たぜ?」
「え……新!」
「じゃあな、白りんご」


 新とその横を走る杏先輩がこちらに来る前に、会長は行ってしまった。ポカンとする俺の頬に、キスと爆弾のような一言を落として。


「りんごーッ、無事か!?」
「平気!? …って、何その顔。何かあったの?」
「……何も、ない」
「嘘だ!」
「本当だし!」


 俺が真っ赤になっていることは見なくても分かる。どれもこれも会長のせいだ。

 その日、帰ってからもずっと頭の中はそればかりだった。不意打ちで「お前に興味あったのは本当だからな? りんご」なんて言うなんてズルすぎる。
 そういえば結局、会長の話の中の鷹人さんは会長に何て言ったのだろう。話をそらしたつもりが同じく会長のことで、俺は苦笑を浮かべるしかなかった。

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