014 =====

 それは唐突だった。


「会長は……鷹人先輩は、俺の憧れなんだ」
「…いッ」
「まだ、教えてほしいことは山ほどあんだよ!」


 怒鳴られたかと思うと、俺の両の手は上でひとまとめにされていた。目の前には会長で、放課後のため人通りはない。
 会長は空いている方の手を俺の頬に添えると、妖しく笑った。


「白りんごを手に入れたら、鷹人さんも俺を無視出来なくなる」
「!?」
「もともとお前には興味があったし、一石二鳥だな」


 恐ろしい単語が聞こえた。
 ここで逃げられなかったら、俺は終わりだ。


「…あ、の」
「ん?」
「……会長と鷹人さんって、どんな関係だったんですか…?」


 苦し紛れだとは自分でも思った。でも、なんとかしなくてはならない。ここには俺を助けてくれる人はいない。期待も出来ない。だったら、隙を見て逃げ出すしかない。


「普通に先輩後輩だ、生徒会役員同士ってだけで……この学園の生徒会って外見・家柄重視だろ? 俺はそれがとことん気に入らなくてな」


 淡い期待を込めた俺の苦肉の策に、会長は乗ってくれた。


「か……鷹人先輩はそんな中で唯一仕事に真面目な人でさ」


 体勢は変わらないが、幾分か力が緩んだ気がする。それに、視線も俺から外されるようになった。


「何もせずにいたらさ、鷹人先輩が怒るんだよ。選ばれたからには仕事をまっとうしろって」


 でも。


「俺は外見より中身を見てほしかった。そしたら会長がこう言うんだ」


 子どものように無邪気に話す会長と、俺の知らない鷹人さんの話に、俺はいつの間にか逃げることを忘れ引き込まれていた。

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