028 =====
「りんごくん、ちょっといいかな」
鷹人さんに声をかけられたのは、夕飯もすんだ休憩中のことだった。
皿洗いをしていた俺は、頷いて水道を止める。いつもなら「それが終わってからでいいよ」って言いそうなものなのに、今日に限っては何も言わなかった。
「単刀直入に言おう。親衛隊が、動き出した」
椅子に座った俺を待っていたのは、先輩のその一言だった。
「最近りんご、青葉のヤツと仲良くしてただろ? だから親衛隊のヤツらがついに我慢出来なくなっちゃったらしくてさー」
「柚流にはすでに嫌がらせはあったみたいだけど、まったく堪えていない。それに焦りを感じた親衛隊が、標的をりんごに変えたみたいだ」
続けて言われる双子の言葉。
さらに、どうやら親衛隊は青葉のだけじゃないらしい。球技大会の時のを目撃した人が意外に多かったことから、東雲のところや双子の、先輩の親衛隊など複数が動いているらしい。
やっとのことで青葉との関係を改善出来たっていうのに、もう手遅れだったなんて。青葉に嘘ついちゃったな。
「りんご」
「何、ですか?」
「俺らのものだと認めろ。そうしたら俺ら兄弟が全力で守ってやる」
それはつまり、学園にいる生徒全員に「俺が春原家で家政夫として働いている」ということを暴露する、ということだった。
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