027 =====

 一段落したところで青葉に転入生が探していたことを伝えると、彼は慌てて帰っていった。別れはわたわたしていたけど、おそらく明日からはまたいつもの日常が待っていることだろう。

 安心から肩の力を抜くと、誰かが笑う気配がした。青葉は帰ったのだから、今は俺と先生の2人きりだ。


「…ったく、心配かけさせやがって」
「先生が勝手に心配したんでしょ?」
「はは、そうかもな」


 先生の大人の余裕にドキリとした。

 本当は全然そんなことない。俺は今回結構参っていて、春原家の人や新がいなければとっくに挫けていた。そしてその中にはもちろん、榊原先生も含まれる。
 俺が青葉といる昼の時間、先生はいつもそばにいてくれた。助け船を出してくれて、とてもお世話になったんだ。

 ただ、その気持ちを言葉に出したら安っぽくなりそうで。

 だから。


「先生」
「ん?」
「…何か、食べたいものありますか?」
「……」
「明日、は無理かもしれないけど……何か好きなもの作ってきます」



 言葉にはしないけど、感謝していることを分かってほしい。国語の先生なんだからそれくらい楽勝だろ?

 先生は俺の視線に笑うと、ただ一言「任せる、おいしいの頼むな」と頭を撫でた。

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