021 =====

「…どうしたんだ?」


 次の日、青葉はまたしても美術室にいた。

 転入生にアピールしに行けよ、そう思っても青葉はついてきてしまったんだ。ニッコリ笑われては断りづらい、し……俺も甘いなって思った。
 そして今の状況と言えば、さっきまでぼんやりとしていた俺の顔を青葉が覗き込んでいる。若干眉が下がって見えるのは、榊原先生の言葉を思い出したからだ。そうに違いない。


「ちょっと考え事」
「ふーん、話してはくれないのか?」
「なんでお前に話さなきゃならないんだよ、友達じゃあるまいし」
「あー…うん、確かにそうだ」


 気になってさりげなく確認してみたが、どうやら青葉も友達とは認識していないようだ。
 なんとなく安心した。後ろから聞こえたため息には気づかないフリ、だ。


「…それより青葉、なんで転入生のトコに行かないんだよ? こうしてる間にも他のライバルたちは転入生と話して、着実に仲良くなっていくんだ。いくらお前が同じクラスだからって……」
「オレ、最近気づいたことがあるんだ」


 俺の説教を遮って青葉は言う。その表情は暗くて重い。


「…もしかしたら、柚流のこと好きじゃないかもしれない」

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